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‪私が3歳の時の話。‬

‪家が極貧で、バラック同然の小屋に母と二人で住んでました。‬
‪父は月に一度、出稼ぎの稼ぎを持ち帰る、そんな日々。‬

‪小屋には雑種の猫が一匹いて、飼うというか一緒に住み着いていて、私は「太郎」と名付けて遊んでました。‬

‪ある日のこと。‬
‪私は母から、太郎を捕まえるように言われました。‬
‪母から言われるがまま、ゲームのように太郎を捕まえ、麻のずた袋に入れて母に渡しました。‬

‪太郎とはそれっきり。‬
‪楽しかった太郎との思い出もそこで終わり。‬

‪私の幼少期の思い出。‬
‪成人して年を追うにつれ「あれは何だったのか?」という疑念が強くなり、ずっと‬
‪気になってました。‬

‪私なりに理解するなら、貧しい家計で猫を飼う余裕が無いので、止む無く行政に処分をお願いしたのかな?と。‬

‪あの日のことを母に聞けばすぐに分かることかもしれないし、そんな昔の話はもう覚えていないかもしれない。‬
‪どちらにしても、私は本当のことが明らかになるのが怖くて、そのことを母に訊けないでいました。‬


‪今日、母の退院祝いの食事会でのこと。‬
‪テレビを見ていて、たまたまペットの話題になり、猫の話になりました。‬

‪母が嬉しそうに、猫を袋に入れて3回まわしてどこかに捨てる、それが楽しいということを言い出したのです。‬
‪3回まわすというのは、おそらく迷信に由来することだと思います。‬

‪その、捕まえた猫をどこかに捨てる、という行為。‬
‪それを少なくとも数回はやっている。‬

‪その中に、私の太郎も含まれている。‬
‪それが明らかになりました。‬

‪突然の母の告白に、私はどうしていいか分からない。‬

‪私を産んでくれた年老いた母。‬
‪大事な母。‬
‪だけど今、母を正視出来ない自分がいる。‬

‪太郎はあの後、どうなったのだろうか?‬

‪忘れることの出来ない、悲しい思い出。‬

‪私の太郎への気持ちは、今でも鮮やかに残っています。‬

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